はじめに
私たちは日々の仕事や生活の中で、「これでいいのだろうか？」「もっと自分らしい働き方はないだろうか？」と悩むことがあります。そんな時に参考になるのが、ハンセン（L.S. Hansen）が提唱した統合的生涯設計理論（Integrative Life Planning：ILP）です。
この理論は、単なるキャリアの選択にとどまらず、人生全体を見つめ直し、自分にとっての幸せや充実をどう実現するかを考えるものです。今回は、ハンセンの理論のポイントを押さえながら、「幸せなキャリア」を築くためのヒントをお伝えします。
統合的生涯設計とは？
ハンセンは、キャリアを「人生の一部」として捉えるべきだと考えました。つまり、仕事の選び方だけでなく、生き方そのものを設計することが大切だということです。
彼女は、統合的生涯設計（ILP）において、6つの重要な課題（タスク）を挙げています。
ハンセンの6つの課題（タスク）
- グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
- 世界的な課題や社会的な不平等に目を向け、自分の力で何ができるかを考える。
- 地域社会への貢献や、持続可能な働き方を模索する視点が求められます。
- 人生を意味ある全体像の中に織り込む
- 人生における役割を４L（愛 LOVE・労働 LABOR・学習 LEARNING・余暇 LEISURE）で表現。
- 人生の複数の役割と職業をどう組み合わせることができるかを考え、仕事だけでなく、社会性、知性、肉体、精神、感情などの統合を図ることが重要と考える。
- 家庭と仕事の間を結ぶ
- 働き方だけでなく、家庭生活とのバランスも大切にする。
- 家族との関係や役割も、キャリアの一部として捉えます。
- 多元性と包括性を大切にする
- 人種・性別・年齢・文化・価値観など、さまざまな違いを尊重し、多様性を取り入れる姿勢が必要。
- 多様な視点から学び、共に成長する力が問われます。
- 個人の変化と組織の変革に共に対処する（チェンジエージェント）
- 自分自身の変化を受け入れながら、職場や社会の変革にも積極的に関わる。
- 変化の担い手としての自覚を持つことが、社会的にも意義あるキャリアを実現する鍵です。
- 精神性、人生の目的、意味を探究する
- 目に見える成功だけでなく、自分が何のために生きているのかという「内なる問い」に向き合う。
- 深い自己理解や人生観を育むことが、長期的な満足感や幸福感につながります。
プラスアルファ：「健康」の重要性
ハンセンはこの6つの課題に加えて、「健康」の重要性についても強調しています。
- 身体的・精神的健康はキャリアの土台であり、どれだけキャリアを追求しても、心身の健康が損なわれては本末転倒です。
- 食事・睡眠・運動・ストレス管理など、日常の自己ケアが、持続可能なキャリア形成を支えます。
なぜ今、統合的生涯設計が必要なのか？
近年、働き方改革や副業解禁、リスキリングの促進など、働く環境が大きく変化しています。AIやテクノロジーの進化により、これまでの仕事がなくなる一方で、新しい職業も生まれています。
そんな変化の中で、ハンセンの統合的生涯設計は、「単なる職業選択」ではなく、人生全体を見渡して、自分にとって本当に大切なことを見極める力を育てることに役立ちます。
実践につなげるヒント
自己理解を深めるワーク
- 自分が大切にしている価値観を書き出す
- 過去にやりがいを感じた仕事や活動を振り返る
キャリアの見直し
- 「今の働き方は自分に合っているか？」を問い直す
- 必要に応じて、新しいスキルの習得や働き方の変更も視野に入れる
他者との対話
- 家族や信頼できる友人と、自分のキャリアについて話す
- 多様な価値観に触れることで、新たな気づきが得られる
まとめ
ハンセンの統合的生涯設計は、キャリアを「生き方全体」として捉えることの重要性を教えてくれます。
- 自分にとっての意味や価値を見つけること
- 家庭・仕事・学び・地域とのつながりをバランスよく持つこと
- 社会や他者との関わりの中で成長すること
- 健康という基盤を大切にすること
これらを意識することで、表面的な成功ではなく、内面的な充実と幸福感を得るキャリアを実現できるのです。
変化の激しい時代だからこそ、表層的な選択にとどまらず、深く自分の人生を見つめ直すことが求められています。統合的生涯設計は、そのための「人生のコンパス」となる理論なのです。
