はじめに
「自分らしい働き方がしたい」「でも、自分に合う仕事がわからない」そう感じたことはありませんか?現代社会では、キャリアの選択肢が多様化し、自分の人生をどのようにデザインするかがますます重要になっています。
そんなときに参考になるのが、キャリア心理学者マーク・サビカス(Mark Savickas)の提唱したキャリア構成理論(Career Construction Theory)です。
サビカスの理論は「自己理解」を深めるうえで大きなヒントを与えてくれます。本記事では、その理論の基本から実践まで、わかりやすく解説していきます。
サビカス理論とは何か?
サビカスの理論は、従来のキャリア理論が「人と職業のマッチング」に重点を置いていたのに対し、個人の語るストーリーに注目したアプローチです。
キャリアとは、単なる職業選択ではなく、人生そのもの。サビカスは「キャリアとは、自分がどんな人間でありたいかというストーリーを語り、行動すること」と捉えました。
つまり、私たちがどんな経験をし、何を大切にしているかを紐解くことで、自分らしいキャリアを見つけることができるという考え方です。
自己理解のカギ「キャリアアダプタビリティー」
サビカスの理論では、キャリアを構成していく力としてキャリア・アダプタビリティー(Career Adaptability)という概念が登場します。
これは以下の「4つのC」と呼ばれる要素で構成されています:
- Concern(関心):将来に対しての備えや関心を持っているか。
- Control(統制):自分のキャリアに対して主体的に動けるか。
- Curiosity(好奇心):さまざまな選択肢に目を向けられるか。
- Confidence(自信):自分の選んだ道を実行に移せるか。
この4Cがバランスよく育っていると、自分らしいキャリアを描きやすくなります。
自己理解を深める「ライフテーマ」の発見
サビカスは「自己理解を深めるには、自分のストーリーを語ることが大切」と考えました。そこで重要となるのが、自分自身のライフテーマ(life theme)を見つけることです。
ライフテーマとは、人生を通じて繰り返し現れる価値観や意味づけ、人生の目的のようなものであり、「なぜそのような選択をするのか」「どんな人生を望んでいるのか」といった問いに答える鍵となります。
このライフテーマを明らかにするために、以下のような問いが有効です:
- 子どもの頃の憧れの人物は誰でしたか?
- 最近読んだ好きな本や映画は?
- 人生で大切にしている価値観は?
- どんな困難を乗り越えてきましたか?
これらに答えていくことで、自分の奥深くにある「人生の意味」や「使命」が浮かび上がってきます。それがライフテーマであり、キャリア選択における重要な指針になります。
自己理解の実践方法
では、実際にサビカスの理論を活かして、どのように自己理解を深めればよいのでしょうか?以下のステップを参考にしてください。
ステップ1:過去を振り返る
子どもの頃に夢中になっていたこと、楽しかった経験、成功体験、乗り越えた困難などを書き出してみましょう。それらは、今の自分にもつながる「キャリアの種」かもしれません。
ステップ2:価値観を明確にする
「何を大切にしているのか」「どんな時にやりがいを感じるのか」など、価値観を言語化することは、進むべき道を明確にするうえで重要です。
ステップ3:未来を描く
「自分はどんな人生を送りたいか」「どんな人でありたいか」といった問いに向き合い、理想のストーリーを描いてみましょう。
ステップ4:4Cの強化
関心・統制・好奇心・自信の4つがどのくらい育っているかを自己評価し、弱い部分を意識的に鍛えていきましょう。
サビカス理論がキャリアに与える力
サビカス理論は、職業に「適応する」ための考え方ではなく、自らの内面に耳を傾け、人生を自分でデザインする力を育てる理論です。
キャリアに悩んでいる人、自分の強みがわからない人、これからの道に迷っている人——そんな方々にとって、サビカスの理論は「自分の中にある答え」に気づかせてくれるツールになります。
まとめ
サビカスのキャリア構成理論は、現代の多様な働き方に対応した“自分軸”を育てるヒントをくれます。
- キャリアは「ストーリー」である
- 4C(関心・統制・好奇心・自信)を育てよう
- 自分の過去・現在・未来をつなげ、ライフテーマを見つけよう
「何をすればいいかわからない」と思ったときこそ、自分自身のストーリーを語ることから始めてみましょう。そこに、あなただけのキャリアの道が見えてくるはずです。