ニートの若者を社会復帰に導く方法

キャリア形成

はじめに

日本では、学校にも通わず、仕事にも就かず、職業訓練も受けていない15歳から34歳の若者を「ニート(NEET)」と定義しています。厚生労働省の調査によれば、その数は年によって増減はあるものの、常に一定数存在しており、特に若年無業者の社会復帰支援が重要な課題となっています。

「働きたい気持ちはあるけれど怖い」「人と関わるのが苦手」「何から始めればよいか分からない」
ニート状態にある若者たちは、単に怠けているのではなく、複雑な背景や心理的ハードルを抱えていることが多くあります。

本記事では、ニートの若者を社会復帰に導くために、キャリア支援者がどのような視点を持ち、どのような支援を行えばよいかをわかりやすく解説します。


ニートの背景にある主な課題

1. 自己肯定感の著しい低下

長期にわたり就労経験がない、あるいは失敗体験を重ねてきた若者は、「自分には価値がない」と感じていることがあります。その結果、自信の喪失や社会的な孤立感が強まり、行動への第一歩を踏み出すことが困難になります。

2. 家族との関係や生活環境の影響

過干渉や無関心といった家族の対応が、若者の自立を妨げているケースもあります。また、生活リズムの乱れや経済的依存が固定化してしまっている場合、日常生活そのものの立て直しから支援が必要になります。

3. 社会との接点が少ないことによる不安

学校や職場など、年齢相応の社会経験が不足していることで、他者との関わりや集団生活に対する不安が非常に大きくなっています。これは、人間関係のトラブルや過去のいじめ、職場での不適応などが影響していることもあります。


社会復帰への支援で重要な3つの視点

1. 安心できる「居場所」づくり

支援の第一歩は、若者が“自分を否定されない場所”に出会うことです。すぐに働くことを前提とせず、「何もしなくてもいい」「ただ話を聞いてもらえる」といった居場所があることで、信頼関係が生まれ、社会への接点を回復する土台となります。

地域の若者サポートステーションや就労準備支援事業、NPO法人が運営する居場所事業などは、その役割を果たす重要な拠点です。

2. 小さな行動目標を一緒に設計する

社会復帰に向けて、いきなり就職活動を始めさせるのではなく、本人のペースに合わせた段階的なステップ設計が必要です。

  • 朝決まった時間に起きる

  • 毎日一言でも日記を書く

  • 週に一度、外出してみる

  • サポステのイベントに参加してみる

このような「できそうなこと」を一緒に設定し、成功体験を積み重ねることで、「自分にもできる」という自己効力感が徐々に育ちます。

3. 「働く意味」を再定義する支援

働くことに対するネガティブな印象が強い場合、「何のために働くのか」を一緒に考えるプロセスが不可欠です。
「生活のため」ではなく、「自分らしく生きるため」「誰かとつながるため」など、価値ある目的と結びつけられるよう支援します。

キャリアコンサルタントは、この再定義を共に行う“伴走者”として、過去の経験を否定するのではなく、未来への可能性に光を当てる姿勢が求められます。


支援の場面で気をつけたいこと

ニート支援においては、以下のような点にも注意が必要です。

  • 指導的・管理的にならず、「待つ支援」を意識する

  • 支援者自身の焦りや期待を押しつけない

  • 親との面談を通じた家族支援も併せて行う

  • 多職種連携(医療・福祉・教育)を意識する

「働かせる」ことがゴールではなく、「その人らしく社会とつながる」ことが支援の目的であるという視点を、常に持ち続けることが重要です。


まとめ

ニートの若者を社会復帰に導くことは、時間がかかり、時には後戻りもある支援です。
しかし、本人の歩みに合わせて丁寧に関わり続けることで、必ず小さな前進が見えてきます。

「その人を信じること」
「できることから始めること」
「本人の価値観を尊重すること」

これらの基本を大切にしながら、支援者自身も“寄り添う覚悟”を持って関わることが、最終的に社会復帰への道をひらいていくのです。

誰もが、社会とつながる力を持っています。その力を信じて、支援の一歩をともに踏み出しましょう。

参考情報

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