はじめに
少子高齢化が進む日本において、「仕事」と「家庭」の両立を支援する法律の整備は、労働者の働きやすさを大きく左右します。特に、育児や介護に直面する世代にとって、法制度の理解はキャリア形成にも直結する重要な要素です。この記事では、2022年以降に段階的に施行された「改正・育児介護休業法」の主な変更点とその背景、そして現場での活用方法について分かりやすく解説します。
育児介護休業法とは?
育児・介護休業法とは、育児や家族の介護が必要な状況において、労働者が仕事を休むことを保障するための法律です。1995年に制定され、これまで何度も改正されてきました。企業にとっても、法改正への対応は重要な人事課題となっています。
法の目的
- 子育てや介護と仕事の両立を可能にする
- 労働者の継続的就労を支援
- 男女ともに育児・介護に関与できる社会の実現
2022年改正の背景と意義
近年の育児・介護を取り巻く環境変化に対応するため、育児介護休業法が抜本的に見直されました。特に男性の育児参加を促すための制度設計が大きく進展しました。
改正の背景
- 出生直後の男性の育児参加率の低さ
- 離職リスクの高い介護世代の支援不足
- 女性のキャリア継続を阻む要因の排除
改正のポイント
1. 「出生時育児休業(産後パパ育休)」の創設
2022年10月より施行された新制度で、原則4週間以内、最大28日間の休業が取得可能になりました。
特徴
- 分割して2回取得可能
- 取得の申し出は、原則2週間前まで
- 有期雇用でも一定条件を満たせば取得可
2. 育児休業の分割取得が可能に
2022年4月の改正で、育児休業を2回に分けて取得できるようになりました。柔軟な働き方を可能にし、パートナーと育児期間を調整しやすくなりました。
3. 介護休業の柔軟化
家族が要介護状態になった場合、これまで最大93日間の介護休業を3回まで分割取得できるルールが強調されました。実態に合わせて活用されることが求められています。
4. 中小企業への支援強化
中小企業への助成金制度が充実し、制度導入や社内周知にかかる負担が軽減されています。
キャリア支援との関係
育児・介護休業制度は、キャリアの中断を防ぐためのセーフティネットでもあります。以下のような観点でキャリアコンサルティングにも活かすことが可能です。
支援の視点
- 休業中のキャリア形成(リスキリング・学習支援)
- 復職前後のフォロー体制の構築
- 管理職とのコミュニケーション支援
活用アドバイス
- 制度の活用にあたっては「早めの情報収集」と「計画的な申し出」が重要です。
- キャリアコンサルタントとして、本人のライフプランと職場環境の調整役を担う意識が求められます。
法制度の活用促進に向けて
企業・組織側でも制度を「整備するだけで終わらせない」工夫が必要です。たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。
企業における取組例
- 制度の説明会やガイドブック配布
- 管理職研修での制度理解の強化
- 育休取得者のロールモデル紹介
制度の認知と理解が深まることで、育児・介護を抱える従業員も安心して制度を活用できます。
まとめ
育児・介護休業法の改正は、働く人のキャリアを「中断」させず、「継続」させるための大きな後押しです。
キャリアコンサルタントにとっても、制度の知識を活かしてクライエントの不安を和らげ、具体的な支援につなげることが求められます。制度は変化し続けています。正確な情報に基づいたアドバイスを行いながら、本人の「働き方」と「生き方」に寄り添った支援を実践していきましょう。