はじめに
うつ病や双極性障害、不安障害など、精神疾患を抱えながら働いている方は少なくありません。厚生労働省の調査によれば、何らかの精神疾患を経験したことのある人は、年々増加傾向にあります。現代社会のストレス環境を考えると、精神疾患は決して特別なものではなく、誰にでも起こり得ることだといえるでしょう。
そんな中で、「病気があるから働けない」「キャリアをあきらめるしかない」と考えてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、精神疾患があっても、自分らしくキャリアを築いていくことは可能です。
この記事では、精神疾患と向き合いながらキャリアを形成するための考え方と具体的な工夫についてお伝えします。
精神疾患とは?
精神疾患の代表例
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- 不安障害(パニック障害、社交不安障害など)
- 統合失調症
- 発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)
精神疾患は、脳の機能や心のバランスが崩れて、気分や考え方、行動に影響が出る病気です。長期的に治療が必要なこともありますが、適切な支援と環境があれば、働きながら回復を目指すことができます。
キャリア形成における3つのポイント
1. 自分の状態を正しく知る(自己理解)
病気の特徴や自分の「できること」「できないこと」を知ることが大切です。無理をしてしまうと、悪化のリスクが高まります。
- 体調の波があるときは?
- どんな仕事なら続けられそう?
- 休養が必要なときにどう対処する?
主治医やキャリアコンサルタント、家族とも相談しながら、自己理解を深めましょう。
2. 環境調整を行う(働き方を工夫する)
精神疾患があっても働ける環境づくりがとても大切です。
具体的な工夫例
- 時間に余裕のある働き方(短時間勤務、週3勤務など)
- テレワーク・在宅勤務の活用
- 業務内容の調整(人前での発表を減らす、作業量をコントロールする)
- 体調に応じた休憩や中抜けの許可
精神疾患は見た目でわかりにくいため、無理をしない範囲で職場に説明することも大切です(合理的配慮)。
3. 支援制度を活用する
主な制度や仕組み
- 障害者雇用制度:企業の障害者雇用枠で働くことができ、配慮を受けやすい
- 障害者手帳の取得:必要に応じて精神障害者保健福祉手帳を取得することで、就労支援や各種サービスが受けられる場合があります
- 就労移行支援事業所の活用:働くための準備や練習ができる施設
- セルフ・キャリアドックやキャリアコンサルティング:専門家と一緒に自分に合った働き方を考える
これらを上手に活用することで、無理なく安心して働く環境を整えることができます。
無理をしすぎないキャリア形成の考え方
完璧を目指さない
「100%のパフォーマンスを出さなければいけない」と思い込むと、自分を追い詰めてしまいます。できる範囲でベストを尽くす、必要なときは助けを求める姿勢が大切です。
「できない自分」も認める
体調がすぐれない日があるのは自然なこと。そんな自分も受け入れながら、一歩ずつ進んでいくことが、長く働き続ける秘訣です。
周囲とつながる
孤立せず、信頼できる人に相談することが大切です。キャリアコンサルタント、産業医、家族、同じような経験を持つ仲間など、支え合うことで前向きになれます。
精神疾患と向き合う人へのメッセージ
精神疾患があると、「迷惑をかけてしまう」「働く資格がない」と思い込んでしまう方がいます。しかし、病気があるからといってあなたの価値が変わるわけではありません。
必要なのは、自分に合ったペースと方法で働くことです。社会にはさまざまな支援制度や、あなたを理解し支えてくれる人たちがいます。焦らず、無理をせず、少しずつキャリアを築いていきましょう。
まとめ
精神疾患があっても、自分らしくキャリアを形成することはできます。大切なのは、
- 自分の状態を知り(自己理解)
- 無理のない働き方を選び(環境調整)
- 必要な支援を活用する(制度利用)
という3つのステップです。自分を大切にしながら、一歩ずつ前に進むことが、キャリア形成の第一歩になります。
【参考リンク】