はじめに
病気やけが、あるいは障害を抱えた方にとって、リハビリテーション(以下、リハビリ)は社会復帰や就労を目指す上で重要なステップです。しかし、リハビリと仕事の両立は決して簡単なことではありません。体力や気力の回復を図る一方で、収入やキャリアをどう維持するかという不安もつきまといます。
現代では、「治療と仕事の両立支援」という考え方が広まり、社会全体で働く人の健康とキャリアを守るための仕組みが整いつつあります。この記事では、リハビリとキャリアを両立させるための考え方や支援制度、実践的な工夫についてご紹介します。
リハビリとキャリアの両立とは?
リハビリの目的と種類
リハビリとは、身体的・精神的・社会的な機能を回復し、できる限り自立した生活を送るための支援です。
- 身体的リハビリ:けがや病気によって損なわれた機能を回復させる
- 心理的リハビリ:心のケアやストレスの緩和を目的とした支援
- 社会的リハビリ:社会参加や就労に向けた支援
キャリアの両立とは
キャリアの両立とは、リハビリに取り組みながら、自分の働き方や仕事の目標を見直し、持続可能なキャリアを築いていくことです。一時的に働けなくなることがあっても、復帰後の道筋を描いておくことで安心して治療や療養に専念できます。
両立のための3つのステップ
1. 自分の状態を把握する(自己理解)
リハビリと仕事を両立させるには、自分の体調や病状、できること・できないことを冷静に理解することが第一歩です。
- どの程度の時間働けるか?
- 通勤は可能か?テレワークが適しているか?
- 集中力や疲労感はどの程度か?
これらを把握することで、無理のない働き方を計画できます。
2. 主治医・職場との連携を図る
自分の状態に合った働き方を実現するには、主治医や職場とのコミュニケーションが欠かせません。
- 医師の意見書をもとに復職計画を立てる
- 上司や人事と相談して勤務形態や業務内容を調整する
- 定期的に体調を報告するルールをつくる
職場に状況を共有することで、周囲の理解と協力を得やすくなります。
3. 支援制度を活用する
主な支援制度
- 治療と仕事の両立支援制度(厚生労働省)
- 産業医や保健師によるサポート
- 病気休職制度や時短勤務制度
- 傷病手当金などの経済的支援
また、復職前の準備として、リワーク支援(職場復帰支援プログラム)を活用する方法もあります。
両立の実現に向けた工夫と心がけ
柔軟な働き方を取り入れる
- 短時間勤務から始める(段階的復職)
- リモートワークや在宅勤務を活用する
- 通院のある日はスケジュールに余裕を持たせる
小さな成功体験を積み重ねる
「1日無事に働けた」「週3日勤務が続けられた」など、少しずつできることを増やしていくことで、自信と希望が持てるようになります。
周囲のサポートを受け入れる
「迷惑をかけたくない」と思って一人で抱え込まず、同僚や上司、家族に状況を伝え、サポートを得ることが大切です。
キャリアの再構築に向けて
キャリアを“線”で考える
病気やリハビリによって、一時的にキャリアが途切れたように見えることがありますが、大切なのは「今後どうしたいか」を考えることです。たとえば、
- 新しい働き方に挑戦する(例:副業、フリーランス)
- 学び直しや資格取得にチャレンジする
- 自分の経験を活かした支援活動に関わる
といった選択肢も広がります。
セルフ・キャリアドックの活用
企業内外で活用が広がっている「セルフ・キャリアドック」は、キャリアコンサルタントによる継続的な面談を通じて、自分らしい働き方を見つける支援制度です。リハビリと並行してキャリアを再構築する際にも有効です。
まとめ
病気やけがを経験すると、キャリアの継続や再構築に不安を抱くのは自然なことです。しかし、リハビリとキャリアは両立可能です。大切なのは、
- 自己理解を深める
- 周囲と連携する
- 支援制度を活用する
という3つの軸を意識しながら、自分のペースで進むこと。
人生100年時代、自分らしい働き方を模索しながら、長く安心して働き続けるために、リハビリとキャリアを同時に支える視点がますます求められています。
【参考リンク】