はじめに
「働きたいけれど子育てとの両立が不安」「キャリアのブランクをどう埋めたらいいか分からない」
こうした声は、現在も多くの女性たちが抱えているものです。
日本社会では、女性の就業率は年々上昇しているものの、依然として課題は山積しています。特に出産・育児・介護といったライフイベントによるキャリアの中断や、非正規雇用の割合の高さ、管理職への登用の壁などが問題視されています。
この記事では、女性の就業状況の現状をデータに基づいて整理しつつ、どのようなキャリア支援が必要とされているのか、具体的な支援の取り組みについて解説していきます。
女性の就業状況の現状
就業率の上昇とその背景
厚生労働省「働く女性の状況」によると、令和5年の女性の労働力率(15 歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、54.8%と前年に比べ 0.6 ポイント上昇とのこのです。その中でも特に「30~34 歳」、「35~39 歳」、「40~44 歳」及び「60~64 歳」については、有配偶者の労働力率の上昇による変化効果が大きかったことが確認されています。
この背景には、共働き家庭の増加や、育児休業制度の整備、保育施設の拡充など、国の政策が後押ししていることが挙げられます。
非正規雇用の課題
一方で、女性労働者の約半数が非正規雇用という現状もあります。
女性の非正規雇用率は令和5年時点で約53.2%。特に出産や育児を経て再就職する際に、正社員としての就労が難しいという実態があります。
非正規雇用は、賃金や昇進の機会、社会保険の面でも不利な条件が多く、長期的なキャリア形成が困難になりやすい傾向があります。
管理職・専門職への登用の壁
女性の管理職比率も徐々に増加していますが、国際的に見ると日本はまだ低水準です。
内閣府の「男女共同参画白書」では、課長相当職以上に占める女性の割合は令和5年時点12.7%にとどまっています。
この背景には、長時間労働慣行や無意識のバイアス、ロールモデルの不足など、構造的な問題が複合的に関わっています。
女性のキャリア支援の現状と取り組み
女性が安心して働き続けられる社会の実現には、キャリアの中断を前提とした多様な支援が不可欠です。ここでは代表的な取り組みや支援策を紹介します。
1. 両立支援制度の活用促進
育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業取得の促進と併せて、女性が働き続けられる環境づくりが進んでいます。
企業によっては、短時間勤務制度やフレックスタイム制を導入することで、仕事と育児の両立を支援しています。
また、自治体やハローワークでは、保育所との連携や子育て世代向けのセミナーなども実施されています。
2. キャリアブランクの支援
出産・育児・介護などによって一度離職した人が、再び社会復帰する際の不安に寄り添う支援も求められています。
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再就職支援セミナー
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女性向けのジョブカード作成支援
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インターンシップやトライアル雇用制度
などを通じて、段階的に仕事へ戻れる環境を整備する取り組みが進められています。
3. 自己理解とライフキャリアの再設計
女性はライフイベントに応じて働き方を柔軟に見直す必要があるため、「ライフキャリア」の視点が欠かせません。
キャリアコンサルタントによる面談やキャリア形成セミナーでは、自己理解を深め、将来の方向性を描き直すための支援が重要になります。
キャリアアンカーや価値観カードなどを活用することで、「自分らしく働く」道を再確認する手助けができます。
まとめ
日本の女性の就業率は確実に伸びていますが、その内側には、非正規雇用の多さ、管理職登用の壁、ライフイベントによる中断といった課題が複雑に絡んでいます。
これらの問題に対し、両立支援制度の充実、キャリアブランクへの支援、自己理解を促すカウンセリングなど、実践的で継続的な支援が求められています。
一人ひとりの女性が、自分のライフステージや価値観に応じたキャリアを築けるよう、社会全体での理解と取り組みが必要です。
キャリアコンサルタントとしても、制度や支援情報の提供にとどまらず、クライエント自身の「選ぶ力」と「描く力」を引き出す関わりが、より一層求められています。