若者のキャリア支援はこう進めよう

キャリア形成

はじめに

キャリア支援の現場では、学生や20代前半の若年層への支援の重要性が年々高まっています。就職氷河期世代とは異なり、現代の若者は「働くこと」そのものに対する価値観が多様化しており、キャリア形成に対する考え方も一様ではありません。

「やりたいことが分からない」「仕事をすぐ辞めたくなる」「正社員にならない選択肢もある?」
こうした相談にどう向き合うかは、キャリアコンサルタントにとって大きなテーマです。

本記事では、若者のキャリア支援における特徴と課題、そして実際の支援に役立つアプローチ方法について、わかりやすく解説します。


若者のキャリア形成を取り巻く現状

1. 不安定な雇用状況と社会構造の変化

総務省の労働力調査によると、非正規雇用の割合は若年層において依然として高く、特にフリーターやアルバイトで生計を立てている人も少なくありません。
加えて、コロナ禍以降の経済不安や求人減少が、将来への不安をより強くしています。

就職しても「ミスマッチ」を感じ、早期離職してしまう若者も多く、安定したキャリアの構築には支援の手が欠かせません。

2. 自己理解の未成熟

若年層の多くは、自分の価値観や強みを十分に把握できていないまま進路を決める傾向があります。
また、社会経験が浅く、働くイメージが曖昧なため、「就職=ゴール」と思ってしまい、その後のギャップに戸惑うケースも多いのが実情です。

3. SNS時代の影響

他人の成功体験やライフスタイルを日々目にすることで、「自分もそうあるべき」と無意識に比較し、自信を失いやすいという現代的な特徴もあります。
過剰な情報量の中で、自分自身の選択を信じられない若者が増えていることも、キャリア支援における課題です。


若者のキャリア支援を成功に導く3つのポイント

1. 自己理解を促す対話を丁寧に行う

若者支援では、自己理解を深めるための対話が特に重要です。
「将来どうなりたいか?」という抽象的な質問ではなく、「これまでに夢中になったことは?」「なぜそれが面白いと思った?」といった具体的な問いかけを通じて、価値観や関心を引き出していくことが効果的です。

ジョブ・カードやキャリアアンカー、ライフラインチャートなどの支援ツールを活用することで、言語化しにくい気持ちを整理する手助けにもなります。

2. 成功体験を積ませるステップ設計

自信が持てない若者には、いきなり「将来の目標を定めよう」とせず、まずは「できることを増やす」ことが重要です。

  • アルバイト経験の振り返り

  • インターンや職場見学

  • ボランティア活動への参加

こうした小さな経験の積み重ねが、「自分にもできることがある」という感覚を育てます。

失敗を恐れすぎず、「まずやってみる」「やってみて考える」姿勢を支援者が示すことで、行動へのハードルを下げることができます。

3. 視野を広げる情報提供と社会理解

自分の知っている範囲が狭ければ、選択肢も限られてしまいます。
そのため、若者には「こんな働き方もある」「こんな会社もある」といった、視野を広げるような情報提供が大切です。

職業情報サイト(「職業情報提供サイト(job tag)」)などを活用し、「こんな仕事もあるんだ」という新たな気づきを与えることで、本人の興味や選択肢を引き出す支援が可能になります。

また、「働く意味」や「社会とのつながり」といったテーマについて考える機会を持つことも、長期的なキャリア形成には有効です。


まとめ

若者のキャリア支援には、「すぐに答えを出させようとしない」ことが何よりも大切です。
自己理解を促し、少しずつ経験を積ませ、視野を広げる支援を丁寧に行うことで、若者は自分自身で納得できるキャリアの道を歩み始めることができます。

未来の可能性はまだ広がっており、失敗してもやり直せる選択肢はたくさんあります。
キャリアコンサルタントとして、そうした希望を若者に伝え、伴走する姿勢こそが、信頼を育てる支援の第一歩です。

若者は「育てる対象」ではなく、「未来の担い手」です。
支援を通じて彼らの可能性に光を当てることが、私たちの社会全体の活力を育むことにもつながっていくのです。

参考情報

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