はじめに
1990年代半ばから2000年代初頭にかけて就職活動を行った世代、いわゆる「就職氷河期世代」は、企業の新卒採用が極端に絞られていた時期に社会に出た人たちです。
この世代は、非正規雇用が長期化したり、キャリアの軸が築けなかったりといった困難を経験し、現在もなおキャリア形成に悩みを抱えている人が多く存在しています。
政府も近年、この世代に向けた支援を強化しており、「就職氷河期世代支援プログラム」が各自治体や支援機関を通じて展開されています。
本記事では、氷河期世代の背景や現状の課題を踏まえつつ、キャリア支援を効果的に行うための視点や具体的な支援策を解説します。
氷河期世代が抱える主な課題
1. 雇用の不安定さと長期的な影響
新卒時に希望する職に就けなかったことで、非正規雇用を余儀なくされた人が多くいます。
正社員経験がないまま中高年に差しかかり、スキルやキャリアの積み上げが困難になってしまったという声も少なくありません。
その結果、転職市場での不利感や「自分はもう遅いのではないか」といった心理的なブレーキが、再チャレンジへの障壁になっています。
2. 自己肯定感の低さと挑戦への不安
長年にわたって不安定な就業状態が続いた場合、「どうせ自分は評価されない」「年齢がハンデになる」という思い込みが定着してしまう傾向があります。
自己肯定感の低さは、新しいことへの挑戦や学び直しを躊躇させ、キャリア形成のチャンスを狭めてしまいます。
3. デジタルスキルや最新の就職活動への不安
求人の多くがインターネット経由での応募を前提としている中で、PC操作やビジネスメールの作成、Web面接などに苦手意識を持つ人もいます。
この「情報格差」や「スキル格差」も、氷河期世代の就労支援において配慮が必要なポイントです。
氷河期世代支援の実践ポイント
1. 経験の再定義と強みの可視化
氷河期世代の中には、正社員としての経験はなくても、長年のアルバイトや派遣、家業の手伝いなど、社会との接点を持ち続けてきた人も多くいます。
これらの経験を「働いた事実」として肯定し、業務で発揮された力を言語化するサポートが重要です。
ジョブ・カードの作成支援や、過去の体験を振り返るワークを通じて、「自分にも伝えられる強みがある」と実感してもらうことが第一歩となります。
2. 成功体験の積み重ねによる自信回復
「失敗したくない」「またうまくいかないのでは」といった不安を払拭するためには、小さな成功体験を重ねることが有効です。
たとえば、
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地域の職業訓練に参加し、修了証を取得する
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模擬面接や職場体験を通じて達成感を得る
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就労支援機関でのボランティア活動に関わる
など、自分が社会で役立てる実感を持てる機会を増やしていくことで、次のステップに進む自信が育まれます。
3. 支援制度や機関との積極的な連携
氷河期世代を対象とした支援は、全国のハローワーク、地域若者サポートステーション、就労準備支援事業、キャリア相談窓口などで展開されています。
特に、以下のような支援が活用されています。
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専門職による個別相談
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IT・介護・建設などのスキル訓練
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企業見学や職場体験プログラム
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履歴書・職務経歴書作成支援
支援者としては、これらの制度を把握し、本人の状況に応じて「どの支援をどう活用するか」を一緒に考える姿勢が求められます。
まとめ
氷河期世代へのキャリア支援は、単なる就職支援ではありません。これまでの不遇な経験に寄り添い、もう一度、自分の人生を前向きに考える機会を提供することが本質です。
「今さら遅い」という感情に寄り添いながら、「これからでも遅くない」と信じてもらえるような支援が必要です。
そのためには、安心して話せる関係づくり、小さな前進を評価する姿勢、そして社会とつながるための多様な入り口の提示が求められます。
氷河期世代の支援は、社会全体の包摂性と持続可能性を高める取り組みでもあります。一人ひとりの声に耳を傾けながら、その再出発を後押ししていきましょう。