はじめに
日本では、がんや糖尿病、メンタルヘルス不調など、長期的な治療を必要とする病気を抱えながら働く人が増えています。こうした人々にとって、「治療と仕事の両立」は重要なテーマです。
本記事では、働く人が治療と仕事を両立するために必要な3つのステップを紹介し、企業やキャリアコンサルタントがどのように支援できるかを解説します。
ステップ1:情報収集と自己理解を深める
まず重要なのは、自分の病気や治療の影響、そして仕事に与える影響について、正確に把握することです。
自己理解を深めるためのポイント
- 治療スケジュールの確認:通院頻度や治療期間を把握
- 体調の変化を記録する:日記やアプリを活用して、体調の波を把握
- 働き方の見直し:フルタイム継続が難しい場合、時短勤務やテレワークの検討
これらの情報を整理することで、自分がどのように働き続けられるか、必要な配慮は何かを客観的に理解できます。
ステップ2:職場との対話と調整を行う
治療と仕事の両立には、職場の理解と柔軟な対応が不可欠です。働く本人だけでなく、上司や人事との建設的な対話が求められます。
職場と話し合うべき項目
- 治療に伴う配慮事項(通院日、疲労への対応など)
- 業務の分担や内容の見直し
- 制度の活用(傷病休暇、時短勤務、在宅勤務など)
コミュニケーションのコツ
- 自分の希望と限界を整理して伝える
- 曖昧な表現を避け、具体的な要望を伝える
- 必要があれば医師の意見書などを準備
職場と丁寧に対話することで、無理なく働き続けるための道筋が見えてきます。
ステップ3:支援制度と外部資源の活用
治療と仕事の両立には、公的・私的な支援制度の活用が大きな助けになります。
活用できる主な制度
- 傷病手当金(健康保険加入者対象)
- 両立支援等助成金(厚生労働省)
- 産業医や保健師との面談制度
- 職業リハビリテーション(ハローワーク等)
外部リソースの例
- 両立支援ネット(厚労省)
- 地域産業保健センター
- キャリアコンサルタントや社会保険労務士
特にキャリアコンサルタントは、本人の働き方や価値観を整理し、継続的な就労に向けた伴走支援が可能です。
両立支援における企業側の役割
企業には、治療と仕事の両立を支援する環境づくりが求められます。職場が制度を整えるだけでなく、実際に機能するよう運用することがポイントです。
企業が整えるべき環境
- 両立支援に関する就業規則の整備
- 職場の理解促進(研修や勉強会)
- 管理職の対応力向上(対応マニュアルの整備)
- 定期的なフォローアップ体制の構築
また、制度は整っていても、実際に利用しやすい雰囲気づくりが大切です。働きながら治療を続けることは、本人にとっても不安や葛藤を伴います。安心して声を上げられる職場風土が求められます。
まとめ
治療と仕事の両立を実現するには、以下の3つのステップが鍵となります。
- 自己理解を深める:体調や働き方を可視化する
- 職場と対話する:無理なく働ける調整を行う
- 制度を活用する:支援策を知り、適切に利用する
本人だけでなく、企業、専門家、それぞれの立場での支援が重要です。
仕事と治療の両立は、社会全体のテーマです。支援の仕組みや対話を通じて、誰もが安心して働き続けられる環境をともに築いていきましょう。