
教育訓練は海外に比べて、日本は遅れているが、どうすべきだろうか。

どのような教育訓練で対応していくべきかを解説しましょう。
こんにちは、そのみちです。
適切な教育訓練で考えるべき日本の生産性向上の道筋
みなさんは、日本経済が長期にわたり停滞している状況について考えたことがありますか? 1994年以降の国内総生産(GDP)の成長率を主要7カ国(G7)と比較すると、米国や英国が約3倍の成長を遂げている一方で、日本は1.8倍にとどまっています。この背景には、人口の増加が進まないことが挙げられるかもしれませんが、それだけが原因ではありません。かつてGDPで米国に次ぐ2位だった時代は遠い過去となり、今、日本はどのように停滞から脱却すべきなのでしょうか。
日本の低生産性の背景
人口減少によって生産性が低下するのは避けられない事実ですが、それだけが原因とは言い切れません。日本が高度経済成長期に培った「モノづくり」の産業から、IT技術が中心となる現代へと移行したことで、経済の構造が大きく変わりました。
具体的には、以下のような「無形資産」を生み出す職業が増加しています。
- ソフトウェアやICT(情報通信技術)関連産業
- 人材育成や教育を行うコンサルティング業
- 研究開発分野
こうした無形資産が経済の主軸になる中で、欧米諸国と比べて日本には何が足りないのでしょうか。その答えは、「人材への投資」にあります。
人材への投資不足の影響
人材への投資が不足すると、急激な技術革新や知識の変化についていけない人が増え、結果として日本全体の知識が陳腐化してしまいます。その結果、人的資本の水準を維持することが難しくなり、他国との差はますます広がります。
さらに、モノ(有形資産)が年10%ほどのスピードで廃れるのに対し、人的資本の価値は年40%ものスピードで失われると言われています。この事実からも、特に情報サービス産業などの分野で「人への投資」が極端に少ない現状は、深刻な問題であると言えるでしょう。
生産性を向上させるためのカギ
生産性を向上させるためには、企業が職場内にとどまらない教育訓練を提供することが重要です。従来のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に加え、職場外での学びやスキルの習得を支援する体制が求められます。
社外でのスキル習得を支援する意義
企業が社員に留学や大学院進学を推奨するなど、職場外での教育機会を提供することは、社員自身の成長につながるだけでなく、企業全体の競争力を高めます。確かに、スキルを身につけた社員が転職するリスクもあります。しかし、人材を囲い込むことに固執するあまり、教育への投資を怠ることは、長期的には企業の停滞を招きます。
人事部門としての取り組み
私自身が人事を担当する中で、次の2つのポイントを重視しています。
- 採用活動の見直し
- 教育活動の見直し
特に、活気に満ちた職場環境をつくり、「去った社員も戻りたくなる」「新たに入りたいと思われる」魅力的な会社にすることを目指しています。そのためには、以下を実現する必要があります。
- 毎日が知的好奇心にあふれ、学び続けられる職場環境
- 入社後も成長を実感できる教育体制
- 個々のキャリアを尊重しながら働きがいを提供する仕組み
こうした環境を整えることで、社員一人ひとりが自身の成長を楽しみながら働ける企業文化が生まれるのです。
そのみちから見た人材育成の重要性
私は氷河期世代として、就職に苦労した経験があります。当時は終身雇用が当たり前で、慎重に企業を選びました。幸運にも安定した企業に入社することができましたが、時代は大きく変わりました。現在では「転職ネイティブ」と呼ばれる世代が増え、副業やパラレルキャリアといった新しい働き方が主流になりつつあります。
こうした時代の変化を受けて、企業は「終身雇用」の概念を超え、日本全体の人材育成に貢献する役割を担う必要があります。自律型人材を育成し、どの企業でも価値を生み出せる人材を輩出することが、日本全体の課題であり、企業の社会的責任でもあります。
最後に
これからの日本が世界と競争していくためには、人材への投資が急務です。個々の企業が社員の成長を後押しすることで、日本全体の競争力を高めることができます。そして、社員一人ひとりが知的好奇心を持ち続け、自分の価値を高める努力を続けることで、日本経済の未来は明るくなるでしょう。
教育訓練や人材育成への投資を、個々の企業だけの課題とせず、日本全体の成長戦略として考える時期が来ているのではないでしょうか。